戦争体験談

水戸での外出

八月一日水戸へと転局した。

 

途中列車の中から富士山を見た。生まれて初めてである。

 

水戸へ移ってから間もなく水泳訓練があった。訓練とは名ばかり単なる海水浴であるが、この時も太平洋で泳いだのは生まれて初めてである。
水戸では日曜日はたいがい休日であった。それは磐田のように部隊ではなく学校であり、教官はおおかた妻帯者で営外居住であったためだと思う。
入隊時所持金は十円程にして、余分の金は家へ送るよういわれていた。その後の支給金は、一等兵の時一ヶ月七円程、上等兵で九円程であった。外出日にはその金を持って外出するのであるが、途中上級兵に会うと敬礼しなければならず、我々下級兵は敬礼のし通しよりも、よく水戸の町の映画館へ入った。
映画で知らぬ間に時間が過ぎ、学校まで走って帰ったこともあった。
また休日には度々飛行場へ遊びにいった。